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ANARCHYが有太マンの「福島」を聞く。


Interview by ANARCHY

 早々に2ヶ月が経とうとしている、4年目の311。福島市の出版社から一冊の本、「福島 未来を切り拓く」が刊行された。
 320Pに溢れんばかりの想いの語り部は100名超。
 それは例えば福島県内外、国外の研究者と専門家。または、母や農家をはじめとした、唐突に未曾有の「核災」最前線に立たされた福島市民。そして、全国から食と農の復興のボランティアに福島を訪れた消費者代表としての、生協職員。
 それら多様な立場から語られた言葉を紡ぎ、県外では知ってるつもりで知らない、時に県民ですら見失いがちな、311前からそこにある「福島」のかたちが立体的に浮かびあがる。
著者は東京出身の平井有太(マン)。平井は2012年10月から福島に拠点を移し、食と農の復興事業に尽力しながら、ミュージシャンやアーティストの招聘を続け、意識の活性化を試みてきた。
 昨年11月に福島を訪問したANARCHYは、ライブはもちろん、映画「DANCHI NO YUME」上映、市民有志による哲学を軸とした討論会“てつがくカフェ”(以下、“てつカフェ”)参加、さらには被災地視察もした。
 その旧知のANARCHYが、著者平井に聞いた。

ANARCHY(以下、ア):考えさせられそう。でもこれ、まだ読めてないけど大丈夫ですか?

平井有太(以下、ひ):むしろそれが良くて。そもそも、読む読まない以前に興味を持ってもらって、手に取るまでのハードルが高いと考えて、今日お願いしました。

ア:もう一度、頭を「福島モード」入れなマズいですね。“てつカフェ”、みたいな。

ひ:あれは「無茶振りだったな」と思いつつ(笑)、でもやっぱり、あれくらいやって届くか、届かないか。それはヒップホップに関して、「今まで自分が何をやろうとしてきたか」って考えると、たぶん「ヒップホップを知らない層に、どう伝えるか」ということが大きくて。

ア:完全そうでしたね。

ひ:インタビューなんて、したことないでしょう?

ア:ないけど、楽しみになってきました(笑)。この本は、なんで書こうと思ったんですか?

ひ:福島で暮らした2年半と、あとは2011年の夏頃から福島との往復を繰り返し、福島のことを考え、文章を書いてきた時間を合わせた約1000日分、なかったことにはできないなと。

ア:どういう人たちに読んでもらいたくて、書こうと思ったんですか?

ひ:2つあって、一つは、福島に住んでる方々への、土地やここまでの経緯について、おさらいの意味を込めて。もう一つは県外、国外の、福島のことを知らない、考えていない人たちにどう福島のことを届けられるか。でも、この分厚さで、最初から「読めない」ってなっちゃうかな。

ア:「痛みの作文」(2008年、ポプラ社。ANARCHYの自伝)よりは絶対厚い(笑)。それに「痛みの作文」は字も大きいし、言葉も簡単すもんね。

ひ:でもこれも、「福島」とか「放射能」、「原発」とかって本の中では、かなり簡単な部類に入るはずで。

ア:これを読んで、知ってもらって、それぞれの気持ちを変えたい部分とかがあるんですか?

ひ:よく言ってるのは、ほんの少しでも、福島を「自分ごと」にしてもらいたい。人ごとでなく、遠いところで起きてることでなく、福島はすぐそこで起きてる、しかも自分自身もそれが起きてる一部であると。

ア:今までもそういう意識で動いている人はいたし、自分らも「そうしよう」と思ったじゃないですか。「これは人ごとじゃないぞ」って、オレも思った瞬間はあったし、ただ「オレらでどうしようもないな」って思う部分もたくさんあって、諦めた人もいっぱいいると思うんですよ。自分の生活もあったり、色んなこと考えながら、福島に対して「何ができるか」っていうのがわからない人の方が多かったんじゃないですかね。この本に書いてあることを知れたとしても、その一歩を踏み出せない人たち、いっぱいいると思う。そういう人たちは、どういう気分になればいいんですかね?

ひ:何もしないとしても、行って、見て、聞いて、という、よく言われることだけど、まずそれらがあると。

ア:オレらなんて東京にいるだけで、関西の友達から「放射能とか浴びまくってんちゃう、自分ら」って言われます。「水呑めへんのちゃう」とか、「料理とか大丈夫なの」、「ご飯屋さんの水は」とか。そういう風になってきちゃうから、例えばチェルノブイリみたいに柵つくって、嫌われようが何だろうが「はい、もう入ったらアカン」ってやればいいんじゃないかって思うんです。それで「悪」になったとしても、助けれるものがあると思う。「悪」がいいひん過ぎて、みんながいい顔しようとしてるから、きれいごとばっかりで済んで、あやふやになってしまってる。

ひ:でも、それは起きなかったし、国はやらなかった。そうしたら今は民間でやれることを考えて、実際にやっていこうと。

ア:現実を目で見て、肌で感じてくると、変わっていくんじゃないかなってことですか?

ひ:その上で、もっとできることって、これは細かいことを端折っていきなり結論になっちゃうんだけど、実は誰にでもできることが明確にあると思っていて。それは、例えば、お金を払う場所を意識する。

ア:寄付ってことですか?

ひ:いや、それは例えば、飲み物や雑誌を買うんでも、コンビニで買うのか、近所の商店、本屋で買うのか。腹が減って、マックに行くのか、町の、ご夫婦でやってるカウンターだけの定食屋で食べるのか。

ア:それ、何が違うんですか?

ひ:それは、僕らの1円、5円、10円、全部それぞれが投票ということ。「この店に頑張って欲しい」、「このジャンルならこれを応援したい」とか、その気持ちを常に、面倒くさいからって近くの何かで済ませないで、そういう日常のことから考え、動く。

ア:でも町のご飯屋さんで食べてたら、近くのコンビニがなくなったりするんでしょう?変わりに地元のコンビニみたいなのがあったら、それは間違いなく使うんですけどね。

ひ:現状よりは、そういうことに近いのかもしれない。今まで安直に、どこかで革命が起きないか、何かが一気にひっくり返らないかって妄想してきたけど、なかなか難しい。しかも一人じゃ絶対無理であると。それでも何かできないか考えると、いきなりそれがゴロッと変わらなくても、結局は小さいことの積み重ねしかなかった。

ア:そうやって選べて、世の中の人たちが電気使わへんようになったら原発いらんくなるのにね。今と同じところに金落とすしかないですよね。発電所が他にあればいいのに。

ひ:オレみたいな素人が知ってる限りでも、徐々に、それぞれが欲しいどこどこ産の電気を選べるような仕組みができつつある。「自由化」も、2016年に控えてる。エネルギーの話は一般的に巨大で、「何もできない」ってなりがちだけど、近い将来変わっていく。

ア:そうやって選べるようになったら、原発は自然になくなるんじゃないですか?「原発はいい」、「原発ラブだ」みたいな人、あんまりいないでしょう。

ひ:ラブではないけど、「稼ぎがなくなる」みたいな人は多いかも。

ア:「知らんがな」って感じじゃないですか。CD売れへんようなっても、「音楽つくってますけど」、みたいな感じですか(笑)。オレ、不思議なんですよね。なんで有太マンは闘ってるんですか?

ひ:いや、オレは単純で。自分だってそういう電気の中で生きてきて、ただ、自分の目の前にある選択肢の中で、たとえ小額でも、金を落とすところは納得できるところから選んでいく。

ア:そんなこと考えんかった。

ひ:その選択は誰でもできるし、突き詰めると、たぶんそれが例えばDELI君の出馬とか、自分の場合は福島に住まわせてもらって、現地の言葉を集めて1冊の本にまとめるとか、それぞれが自分の居場所でできることをやるだけという。

ア:そういうことが、この本に書いてある?

ひ:あんまり書いてない(笑)。本は、もっとそれ以前、「福島」が遠い複雑なものではなく、身近な場所に感じてもらえるように。特に第3章には、福島市民のインタビューが30人くらい入っていて、そもそも福島がどういう土地なのか。または、それこそ原発が爆発してからの苦労話。そういうことを、なるべく脚色なく、そのままの福島が見えてくるように。

ア:でも、一人一人の小さい選択にも意味があるっていうのは、それが九州とか沖縄の人たちがそうしても、福島のことに繋がるっていう気がしないです。

ひ:たぶんそこは、福島が今抱えてる問題と、各地方都市が抱えている問題と構図はすごく似ていて。それはシャッター商店街とか、後継者不足とか、端の方の過疎化とか。

ア:それは岡山でもどこでも、商店街は全部シャッター閉まってて、近くにでかいイオンができてて。でもそのイオンでは何千人、もしかしたらその商店街より多い人間が働いてる可能性もある。そういうことを考えると、相手は原発一つとか電気云々じゃない、もっと大きい力ってことになりますよね。そもそもなんで福島に行ったんですか?

ひ:それは、「世界の最前線が日本にできてしまった」と思ってしまったので。

ア:前々から、ヒップホップのことを話す時に、「最悪の場所からこそ最高のものが生まれる」って。

ひ:福島に関しては、「最悪の場所」という表現は合わないんだけど。

ア:でも、そう言った方がはっきりするんじゃないですか?

ひ:感じるのは、「差別の場所」ということ。もちろん4年も経つと、市民と現場の尽力で、測定を通じて実態はずいぶん見えてきてはいる。でも、これだけのことを起こした当事者サイドが、未だに何かというと、タバコや車に乗るリスクと放射能のリスクを比べて、「こんなに小さいんだから気にするまでもない」と言ってくる。問題は、それぞれが選択できるリスクとは違う、突然自分以外の責任で降ってきた放射性物質のことでしょうと。

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