• OVERHEAT MUSIC

環ROY
あっちとこっち


Text by Ryo Komiyakawa As Realgold$(Niko¥on Production) Photo by Yoshiharu Ota (A/M)

“マジョリティ”はいつも空虚で“ポップ”はうつろいやすい。ラッパー・環ROYは、それを承知しながらもデビューから今日に至るまで、ずっとポップを追い求めているに違いない。きっと彼のそのスタンスこそがポップなのだと思う。新作『あっちとこっち』は、言うなればヒップホップのフォーマットで綴るポップスへのラブレター。孤独を歌った収録曲「Ms.Solitude」を「南佳孝みたいなシティ・ポップスだね」と評した私に、彼は「まじで?だと嬉しいです」と微笑んだ。

●「理解できないのか/しようとしてないのか/なぁ、俺は後者か?」(「収録曲「ハッピーバースデー」のブリッジ)って歌詞が一番顕著だけど、テーマはコミュニケーションとディスコミュニケーション?

環ROY:テーマはざっくり言ったらそうかも。あれ、いい詞でしょ? ラップとかヒップホップとか、ブラックミュージックとか、あんまり考えないで、“ヒップホップ的な何か”でいいやって思って作りました。正直ヒップホップじゃなくても何でもいいんだよね、伝われば。

●例えるなら、70年代の青年だったらフォークシンガーになっていたかもしれないし、ジャマイカで育っていたなら、ダンスホールレゲエのサウンド・マンになっていたかもしれないってこと?

環ROY:そうすね。たまたま80年代に生まれて、(自分が一番音楽の影響を受けた)90年代の後半に、ヒップホップがユースカルチャーとして一番輝きを放っていたってこと、それだけっすね、たぶん。だいたい日本人なんて、みんなそうじゃないの? アニメを観て、アニソンを聴いて、それで、いきなりヒップホップになるわけじゃないでしょ、アフリカン・アメリカンじゃないんだし。

●リスナーみんなの根底にあるのがポップスなのだとしたら、それが一番自然なやり方だし、そういう意味で、この作品は≪環ROYがヒップホップのフォーマットで綴ったポップスへのラブレター≫だと思うよ。

環ROY:すべての物事がそうだと思うけど、ポップスの概念も流動するから。Jポップの発展って70年代後半~80年代のニュー・ミュージック以降、バブルと重なってたじゃん。つまり、経済と密接な関係にあったんだと思う。90年代の後半に経済成長が止まってしまったから、きっと2000年に入ったときにはポップスはもう終わってしまっていたのかも。だから、ラブレターっていう表現は、それはそれで的確と思うけど、(自分がやっているのは)自分の世代がやるべき“ポップスの新しい道”なんだって信じたい。

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