• OVERHEAT MUSIC

tha BOSS 

●YASさんのトラックが、そのYOUさんとご一緒された曲です。リリックの内容も、一語一句聴き逃せません。

B:正直オレは、YOU THE ROCK★をディスしてこの世界にエントリーしてきた人間だから。あの時代、日本のさんピンに出てたやつらが幅きかせてたのをどかして、札幌から出てきて、自分の居場所つくって、シノギつくって、ここまで来た。直接だろうが間接だろうが、俺の出所はそこだ。それに対して後ろめたさも負い目もないけど、言葉は自分に返ってくる。だから、結局オレがYOUに「何を言ったか」、「どういうやり方をしたか」というのはずっと思ってて、そしてYOUはオレと同い歳で。
 あれからも3年に一回とかは現場で会うことがあって、いつかオレも、その確執というか、昔のオレのやらかしたことを、「ごめん」ということは言わずに、「なんとかポジティブな方向に持っていきたい」と思ってたんだよね。それも、誰かが招いてくれるんじゃなくて、オレ自身がその場所をつくりたかった。だから、YOUを招いて、「一曲つくろうよ」ってことをしたいと思っていて。
 それで、中目の駅にYOU THE ROCK★と待ち合わせて、居酒屋でがっつり呑んで、、。

●そこに、お2人の顔がわかるB-BOYが入ってきたら、異常事態過ぎます(笑)。

B:それほどでもないよ(笑)。でも特にYOUは、ここ最近いろいろあったから。だからオレは、YOU THE ROCK★って人間がすげー調子よかった時代も知ってるし、世の中みんなそうだと思うんだけど、苦しかったり、孤独になったり、トラブルがあった以降の彼の言葉を、逆に「聴きたい」と思ったの。
 あれだけ楽天的で、あれだけ、陰と陽なら陽のバイブスを振りまいてた男が、現状としてどんな場所にいて、どんな言葉を吐いて、それを一番聴かせたかった。それをその通り、YOUに言ったし。つうか、「お前、まだやってるんだから、オレが場所つくるから、ちょっとそれ証明しろ」みたいな。「オレはお前の客奪ってここまで来たんだから、お前もオレの場所奪うくらいのバース書け」って言ったら、YOUも「やってやるよ、コノヤロウ」みたいな、すごいいい感じで。「じゃあ、ビートはYASにつくってもらおう」って、しかも3人とも44歳で。
 だから、今の20代とかそれこそ高校生も、「バトル」っていうものをやってる。あれはまあ、競技のような一定のルールの下でやってるんだろうけど、オレら実際あの頃、ガチで、命かけて、自分たちのシノギをつくるために意地や誇りをぶつけ合って、そこから20年くらいが経って。
 今までやり続けて、ヒップホップを信じ続けてたら、またこうやって曲つくって、「仲直り」じゃないけど、「再生して、ポジティブにユナイトできるんだよ」っていう風な曲になったんだよね。彼とオレの因縁が。
 その時に、今回のアルバムのタイトルが、一番最初に思い浮かんだね。
 YOUも居酒屋で、「ヒップホップずっとやり続けてれば、こんな日がくるんだね」みたいなことを、酒呑みながら喋ってて。
 「ヒップホップがあったからまた会えたな」って。

●そこでアルバムのタイトルが生まれた。

B:「『IN THE NAME OF HIPHOP』としか言いようがないね」なんて言って。

●そしてサビは、2人で同じリリックを代わる代わる言い合うという。

B:あれは、一瞬だったよ。あのサビはスタジオで一緒につくったから、本当に、すごい一瞬、1、2回のテイクで終わった感じ。

●阿吽の呼吸で。

B:居酒屋での喋りがすでにリリックと同じ感じだったよね。

●別の曲には、「オレは今ピークにいる」というリリックがありました。「常にそういう姿勢でやってるよ」ということでしょうか。

B:今も本当にそう思ってるよ。だって、この44という若さでさ、たっぷり経験は積んでるし、ばっちりだと思ってる。

●しっかり『TOTAL』の先に着地できた。

B:ビートメイカーもラッパーもエンジニアも、全部合わせると20人、それぞれと向かい合って曲をつくったので。その人それぞれと連絡をとって、それぞれとビジョンを共有するというのは結構大変だったけど、「曲を書く」という意味では、そんなに難しくはなかった。

●「実現した妄想」、「やりたい放題、大往生」という言葉もありました。

B:本当にそんな感じで。そんなこと、今の時代を考えると、やりたくても誰もができることじゃないし、「幸運だな」って。だからこそ、「やれることは全部やろう」と思えて、その通りやりました。

●「FREE GAZA」、「FREE LHASA」との言葉もありました。パレスチナやチベット、やはり、ご自分がやられていることと世界が繋がってる意識ですか?

B:常にあるね。新聞読んでれば、誰だってそうなるよ。 

●SEALDsの奥田愛基さんという方が、今日先ほど、参議院であった中央公聴会で「そこからまた始まっていくのです」と発言していました。そして今回のアルバムの中ではYOUさん、BOSSさんが、「俺はこれからだ」と。

B:政治も生活もHIPHOPも、そうとしか言いようがないよね。
 今はデモに出たり、政治に関わったり、反対賛成と、みんなの意見があって、そういう時代。その集約もされてないというか、混沌から生まれるというか、俺的には結論も焦ってないというか。だって、あと2世代も経ったら、日本なんかもっとぶっ壊れまくって、今のアメリカみたいになるんだから。
 そう考えると、「法律」っていうものは確かに一度決められると簡単には動かせないけど、世の中の価値観とか流れは、どっちみちそっちに向いていくとは思う。それをわかってるからお国も締め付けようとしてるんであって、でも流れはどっちみち、今のシステムは破綻する方向にいくと思うよ。オレはそう思ってる。

●基礎、思想、理論、遺書、偉業、理想、希望といった言葉が、ご自分にとってのヒップホップを説明する上でありました。それでもまだ語り尽くせてないヒップホップの要素はある?

B:「IN THE NAME OF HIPHOP」ということに関しては、結構この、特典の曲を含めて16曲に込めたワードで、オレの中ではばっちり体系づけた。これで僕の想うヒップホップは、理論づけることができたと思ってる。

●それを、どこに届けたいですか?

B:オレは門戸を全開に広げてるから、誰でもいい。でもKRUSHさんやYOUとYASとの曲に関しては、あの時代、2000年代前後にヒップホップにはまってた人たちに届いて欲しいと思う。「今もやってる」って意味でも、オレたちみたいな40代中盤になっても、「ヒップホップで歌われるべきことがある」し、「昔のように全てが思い通りにいかないけれど、それでもそれすらもかっこよく歌うこともできる」という、「そこにどうしようもなく負けず嫌いなヒップホップのロマンを感じて欲しい」というのもある。同時に、いつだって、誰だっていいですよ。
 あえて「ヒップホップ」って付けたのもあるけど、レゲエとかパンクとかロックを聴く人にとっても、ヒップホップにも色んなかたちがあるけど、「今の日本のヒップホップはこれだから」みたいなこともある。「ヒップホップっつったら、これ」。「まず、こっから入りなよ」みたいな。それはもちろん、今回一緒にやってくれた人も含めて。

●アメリカのアルバムでも、たぶんここまで真っ直ぐなタイトルは、なかったかと。

B:そうだよね。オレも一瞬、こんなタイトルを付けることにビビッた。でも、44の「この若さだったら付けられるな」と思った。

●若さ、、

B:この「若さ」だから、「それくらいのテンションで行けちゃうな」って。ヒップホップの中じゃあベテランだけど、44歳だよ。ボブ・ディランとかの視点から見たら、超ガキ(笑)。逆に、だからこそ、「そんなことドサクサで言えるのは、今しかない」って思ったんだよ。


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