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PUSHIM immature


text by Nobuhiko Mabuchi

「歳を重ねるうちに、だんだんと自分のやんちゃ度を押し殺していた部分もあったと思う。それを解除した。」そう語るのは、今年でデビュー20周年を迎え、通算10枚目のアルバムを完成させたPUSHIM。レゲエにこだわり、レゲエを超越したアプローチでも稀有のミュージカリティを発揮し、ひとりの女性/母親として感動を届けてきた彼女。節目に想うことは何か、話を訊いた。

●デビューから20周年。そんな節目も意識しながらの制作だったのでしょうか?

PUSHIM(以下、P):はい。意識してましたね。オリジナル・アルバムとしては『F』から3年ぶりになりますし、どうせなら去年より今年、20周年に絡めたほうがいろんな意味でいいのかなと思って(笑)。去年はMagnum Recordsの面々(RUDEBWOY FACE、RUEED、AKANE、KILLA NAMI)と一緒にツアーまわったりしてたんですけど、それも20周年に向けてのアプローチでもありました。

●ということは、制作自体もだいぶ前から動き出していたと?

P:前作『F』の制作が終わった頃から、なんとなくのイメージは決めていましたね。2017年5月に配信したシングル「ALFEE」を作った辺りからは、徐々に進めてました。

●その「ALFEE」は、どのような想いで制作した曲なのでしょうか?

P:夏っぽい曲が作りたいと思って、ソウルの曲からインスパイアされてメロディやコード進行が出来上がった後、一昨年の1月にジャマイカへ行ったんですね。子どもが5歳になったら、一緒にジャマイカのおばあちゃんに会いに行こうと計画していたので、そのタイミングで制作もしてきました。プロデュースしてもらったのは、これまでに「Mr. Teaser」や「Tokyo City feat. MC 漢」などを一緒に作ってきたギタリストのMitchum “Khan” Chin。バックは全員ジャマイカのミュージシャンです。向こうに行ってオケを制作してきたこともあって、車に乗りながらジャマイカの風を感じて、ラジオからは懐かしいレゲエが聴こえてきたり……という思い出も歌詞に反映されています。

●既発曲としては、他に「ナナメにキメるSTYLE」と「THE FREEDOM ROCK」を収録。どちらも別タイプのレゲエですが、前作『F』でインタヴューしたときにPUSHIMさんは「たまたまレゲエの曲が少なくなっただけで、次やればいいっていう感覚」と発言していました。やはり今作は、制作当初からフロア向けの作品を意識していたということでしょうか?

P:そうですね。今回のアルバムはシミやん(SHIMI from BUZZER BEATS)に共同プロデューサーとして入ってもらって、彼のセンスとセッションして制作した感じです。「あたしが歌うより、もっと若くて踊れるかわいいコが歌ったら売れるんちゃう?」とか言いながら(笑)。そういうトラックと実年齢のギャップも感じつつ、こういう曲も作れます!」というプレゼンになるアルバムにしたいという気持ちもありましたね。

●やりたい曲を詰め込んでいったと?

P:そうかもしれないですね。私も歳を重ねるうちに、だんだんと自分のやんちゃ度を押し殺していた部分もあったと思うんです。それを今回のアルバムで解除した感じですね。まだまだ老け込みたくないので。

●アルバムタイトル『immature』に込めた想いを教えてください。

P:デビュー20周年に10枚目のアルバムという節目に感じたのは、まだまだ自分はやりたいことがありますし、歌ももっと上手になりたいし、もっと言えば全然上手くならへんなと。まだ道半ばだなという気持ちがあるので、未完成とか未熟という言葉をタイトルにつけたいと思ったんですよね。

●今から5年前、15周年のベスト盤をリリースするときに、PUSHIMさんは「今やから言えることですけど、大阪時代と比べて、歌ヘタなったなぁと今でも思っています。ただ、こうやって人に言えるようになったってことは、少しずつ抜けてきてる証拠かもしれん」なんて発言をしていました。

P:覚えてます。ほんま素直なコメントやったと思います。その発言から5年経った今、アルバムタイトルに『immature』と掲げたのは、当時1メートルやった自分が2メートルになりましたってことではなかったということですね。でも、1メートル50センチにはなれましたという感じです(笑)。

●その50センチの成長とは何だったと思いますか?

P:自分を信じること。スランプ時期は自分を疑っていたと思うんです。それが抜けたというか、抜き方を知れたんだと思います。そう考えると、まだ50センチも伸びてなかったですね。20センチくらいです(笑)。あと、タイトルの『immature』は“I’m mature”とも読めるので、ちょうどいいかなと思って。私も今年で44歳なので、もうええおばちゃんやないですか(笑)。何がimmatureやねんって感じなんですけど、“I’m mature”という捉え方も加えたら未熟と成熟の間という意味にもとれるので、すごくぴったりなタイトルになったかなと思っています。

●アルバムタイトルを掲げたイントロに続くのが、リード曲の「DiDistance」です。RUDEBWOY FACEの作詞なんですね?

P:はい。ダンスホールのラブソングが作りたいと思って、男女のキュンとする距離感をエロさも交えて書いて欲しいとオファーしました。RUDEBWOYは長い付き合いですし、ただ単に彼の大ファンなんです。彼のスタイルもリリックも大好きで、曲を聴いていると情景が浮かぶんですよね。ほんまに素敵な歌詞を書く人なんです。今までは他の人に歌詞を頼もうと思ったことはないんですが、今回は歌詞がマンネリするのが嫌やったんで、輸血みたいな感じでRUDEBWOYにお願いしました。

●確かに輸血するならラガな血が流れているRUDEBWOY FACEは最適ですね。でも、そんなラガな彼が、こういった歌詞を書くのはちょっと意外でした。

P:女子力高いですよね。こんなことレゲエDeeJayに向けて言うと怒られるんですけど(笑)。でもほんまに彼は幅が広いんですよね。最近リリースした楽曲もものすごくラガでかっこいいんですけど、そこから役者のように自分を置き換えてこういう歌詞が書けるのはすごい才能です。

●他人が書いた歌詞を歌うというアプローチ自体が初めてだったと思いますが、何か感じたことはありましたか?

P:ちょっとRUDEBWOYっぽい曲だよねって言われるのは癪なので、どんだけ自分の曲にするかということは意識して歌いました。

●PUSHIMさんの作品やライヴに欠かせない存在のHOME GROWN。今作では「世界の何処かで」と「In my village」をプロデュースしてもらっていますね。

P:制作中はCHOZEN LEE(FIREBALL)のスタジオをよく使わせてもらっていて、そこにTANCOさん(HOME GROWN)も来てもらってプリプロしました。「世界の何処かで」と「In my village」もそうですが、イントロを聴いただけでHOME GROWNという曲ですね。

●「世界の何処かで」の歌詞の世界観について教えてください。

P:これまでも「夕陽」や「Light Up Your Fire」で言ってきたことと同じなんですけど、東日本大震災以降、人生何があるか分からないという気持ちが強くて。政治の動きを止めるなら団結して行動することで変えられる可能性があっても、天災は誰にも止めることができないですよね。いつまたどこで天災が起こるか分からないという状況で日々生活をしているわけで、私もこの先どこにいるか分からない。という想いがあって、歌い始めの歌詞が<世界の何処かで逢いましょう>なんです。そして、自分が今まで歩んできた道は誰にも汚されることはないという事実、どこまで辿り着けるか分からないけど、もう少しほんの少し自分を信じて進んでいこうと歌うことで、私の想いを表現してみました。

●アルバムの最終曲に収録した、同じくHOME GROWNプロデュースの「In my village」はどのように制作していったのでしょうか?

P:この曲は、自分の頭の中でメロディと歌詞がほぼ同時に出来上がっていたんです。このテイストなら、HOME GROWNがいいなと思ってお願いしました。コード感が動く曲なので、どういうレゲエになるかは固執せんと、「I pray」のようなテイストを求めました。なので、「世界の何処かで」をオーソドックスなレゲエに仕上げたところもあります。

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