• OVERHEAT MUSIC

DAVID RODIGAN
「大英帝国が世界に誇るレゲエ伝道師」

●SKAを通じてジャマイカの音楽に出会い、魅了されたことは理解しました。ただ、ご自身はロンドンに移ってから現在までずっとロンドンで暮らしています。ロンドンと言えば、それこそ70年代のPUNKロック・ムーヴメントもそうですけど、ROCKや様々なジャンルの音楽の発火点でもあると思っています。JUNGLE、DRUM&BASS、最近でもGRIMEとか常に新しかったり、刺激的な音楽が生まれる街だとも思っています。その中に居て、ジャマイカの音楽以外の音楽に興味や関心が移ることはなかったのですか?

DR:ずっとジャマイカの音楽以外の音楽も聴いて来たし、現在も聴いてるし、たくさんの刺激を受け続けて来ているよ。最初にも話した通り、僕はジャマイカの音楽と出会う以前から音楽ファンだからね。あと、最初に話した「OUTLOOK ORCHESTRA」の「OUTLOOK」も知っての通り、もともとは存在するフェスティヴァルの名前で、そこにはDRUM & BASSとか所謂BASS MUSICがメインとなっているフェスティヴァルなんだけど、自分は何度も出演していて、そこではストレートにジャマイカの音楽をプレイすることもあるけど、ジャマイカの音源をDRUM&BASSとかにリミックスしてプレーしたりもしているんだ。DRUM&BASSはレゲエから生まれた音楽だしね。そうした全ての音楽、新しい音楽への興味は尽きない。ただ、その中で自分が好むものとそうではないものが存在するのはそれは仕方ないとは思う。

●ご自身はジャマイカ人ではありません。言うまでもなくレゲエはジャマイカの人達が作った音楽ですし、主に「黒人」とされる人達が作った音楽です。その中には「黒人による黒人のための歌」と取れる歌詞の曲や、あるいは黒人以外の人種がその批判や非難の対象となっている歌詞の曲も存在していると思います。そうした曲に触れる際は、それをどう捉えてきましたか?

DR:その通りだね。僕はジャマイカ人ではない、君もね。僕も君もロックス(ドレッド)ではない。

歌詞の話をしよう。まず最初に言いたいのは音楽は「UNIVERSAL LANGUAGE=世界共通の言語)であるということだ。どこの国で生まれた音楽であっても、それは世界の人達を結びつけるものなんだ。ジャマイカで生まれたレゲエのビートは、世界中の人達を結びつけているんだ。自分もそう、MIGHTY CROWNもそう、今ここで君と話しているのも、MR.ECと会っているのもレゲエを通じて結びつけられているんだ。

その上で歌詞の話だ。音楽はどこの国で歌われていても、その歌われていることには他の国の人達も含まれるんだ。黒人が歌うことは白人にも当てはまるだろうし、ジャマイカのラスタファリアンの歌うことはきっとオーストラリアの原住民のアボリジニにも当てはまるだろうし、何人であれ、人が歌うことは自分自身にも当てはまることはあるんだ。仮に自分が誰かの批判の対象となるのなら、それを通じて自分の置かれている状況と、相手の置かれている状況を知り得る機会となるんだ。そうした理解を深め合うことが互いを結びつけることにつながるんだ。

つまりね、確かにレゲエはジャマイカで生まれた音楽で、もともとはジャマイカの人達に向けて作られた音楽だったかもしれない、でも、そのレゲエが特に素晴らしいのは、そのビートは勿論だけど、そのメッセージは世界中のどこの国でも、どの地域でも、どんな人種でも関係なく、自分達のことを歌っている音楽として受け入れられることで、それを通じて自分達のことだけではなく、違う国や地域や人種の人達との理解にもつなげられるということなんだ。音楽が世界の人達を結びつける素晴らしいものなのは言うまでもないと思うけど、その中でもレゲエは特に世界の人々を結びつける素晴らしい音楽なんだ。

なぜ僕がそんなにレゲエに惹かれているのか、なぜ他の音楽よりもずっとレゲエなのか、もし、君がそうしたことを僕に質問したいんだとすれば、それが僕からの回答になると思うよ。

BURNING SPEAR『MARCUS GARVEY』、BOB MARLEY & THE WAILERS『CATCH A FIRE』、あと、JOE GIBBSがCULTUREと最初に作ったアルバム(『TWO SEVENS CLASH』)もそれに含めよう・・、これらのジャマイカのルーツ、そしてカルチャーを伝えたアルバムは聴く者を限定していない。自分は『MARCUS GARVEY』を聴いて、マーカス・ガーヴィーというジャマイカの黒人民族主義の指導者がいたことを知り、ジャマイカにどうやって黒人が連れて来られたのかを学ぶことになり、そこからさらにジャマイカの歴史を学ぶことになった。そしてセラシアイ(ハイレ・セラシエ皇帝)の存在や、彼らがセラシアイを「JAH」と信奉する理由も学んで、どうしてこうした曲を歌うのかも理解していった。そうした行動を通じて理解を深めていった。

いや、ちょっと待った。もっと、ストレートに君の質問に答えることにしよう。

音楽、特にレゲエは、「HOPE=希望」のために歌われるものなんだ。

厳しい状況に置かれている人達、それが刑務所に居る人でも、食べる物に困っている人でも、そうではなくても精神的に抑圧されたりしている人でも、どこに暮らそうが、幾つであろうが、日本であろうが、ジャマイカであろうが、サンフランシスコであろうが、聴く人達に希望を与えるために存在しているんだ。決して一部の人種や国民の中だけの音楽ではないんだ、それが音楽の本当の力と美しさなんだ。それをレゲエは確かに兼ね備えている。

そして、もし・・、もし、そのことをレゲエから感じられないとしたら、それはその人には「SOUL=魂」が宿っていないということなんだ・・。僕はそう思っているよ。

●時間です。最後に聞かせてください。ずっとレゲエの歴史、変遷を見続けてきたと思います。その上で現在のレゲエをどう感じていますか??

DR:本質的には変わらないと思うね。ドラムとベース・・、ワン・ドロップ・・、メッセージ・・、そうしたレゲエの基礎になっている音楽的な部分は現在もずっと変わらずに存在し続けていると思う。

若いアーティスト達、CHRONIXX、PROTOJE・・、彼らの音楽にはそれを受け継いでいる部分を確認できるし、それゆえに大きな成功を収めていると思うし、それによってさらに世界に広めていることにもつながっていると思う。それとは別に新たなことを取り入れているアーティスト達も存在して、POPCAAN、あと、誰だっけ?、なんか目がこんな感じの・・、そうそうALKALINE。彼らはダンスホール・アーティストで、HIPHOPとか様々な要素を取り入れて変化させ続けている。ただ、ダンスホールは常にそうやって新しい要素を取り入れながら変化していく音楽で、これまでもずっとそうやって変わり続けてきたことなので、そういう意味でも変わりはないと思う。色々と変化する中で、それを好むか好まないかは聴き手次第かもしれない。だが、そうやって現在も若いアーティスト達が登場して、変化させ続けていることは良いことだと思うよ。CHRONIXXもPOPCAANもどちらもロンドンの公演では1万人も動員した。それは凄いことだよ。それはレゲエとダンスホールが現在も広がり続けていること、新しいファン層を獲得し続けていることを表していると思うよ。

あと、SKA、ROCKSTEADYも変わらずに存在していて、現在では世界各国でSKAバンド、ROCKSTEADYバンドが存在している。中には親がジャマイカ人だったりとか、ジャマイカ人が含まれている場合もあるけど、ジャマイカ人ではない場合も多い、日本にもたくさんいるだろう? それはそれだけその音楽が現在も新鮮で、現在も求められ続けていることを表していると思う。それは最初のアルバート・ホールの公演の話にも通じるけど。

まぁ、でも、若いアーティスト達が次々と登場してくるのもジャマイカの音楽の変わらない魅力だと思う。僕は現在でも若いアーティストの新しい音楽を聴いている。現在の自分がその全ての魅力を理解できているかどうかはわからないけどね。若いアーティスト達は彼らの感性で若い人達に向けて曲を作っているし、それがいいことなんだけど、僕ももう68歳だからね、それを自分が正しく理解できているのかはわからない。でもね、その68歳になる自分が刺激を受けるアーティストや曲は確かに今でもたくさん存在しているのは事実だ、最近ならKOFFEE、あと、SEVENA・・、他にもいるね。そうやって、新しいアーティスト達、新しい音楽に触れていることが自分の若さの理由だとも思うんだ。音楽が自分を若くいさせてくれると思うんだ。

昨晩もそうだった。COJIE(MIGHTY CROWN〕のプレーを聴いていたら、「誰の曲なんだ?」「初めて聴いたぞ」と惹きつけられた曲が何曲かあったんだけど、そうやって、知らないことを知りたくなる欲求と言うのかな、自分がこの歳になっても新しく知ること、それと出会うことが楽しくて仕方ないんだ。音楽はずっとそうした刺激を与えてくれる。音楽には年齢は関係ないよ。全くね。それは本当にそう思っているよ。


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