Chuck Fenda
The Poor People's Defender
 
 
Interview by Simret Cheema-Innis / Text by Cisco Europe / Photo by Carlington Wilmot

 

自らを“The Poor People's Defender”と称し、メッセージ色の濃い作品が多いChuck Fenda。2006年にリリースした「Gash Dem」はその挑発的な内容で論争となり、ジャマイカではたちまち放送禁止に。それが他国では逆に話題となり、次なるメッセージ「Freedon Of Speech」を発表。この2曲によって彼の名は世界中に知られるようになったが、本人曰く「Hypeになる事が夢ではない。Peace&Loveを更に広げる事だ」と至って真摯。23箇所を回ったUSAツアーを終えてジャマイカに戻ったばかりの彼に最新のアルバム『The Living Fire』について話を聞いた。
 
●生まれはどこですか?
Chuck Fenda(以下C):ニューヨークで生まれたんだけど、6週間後には母から離されてジャマイカに移されたんだ。分かる? 僕の子供時代はラフだったんだよ。大変だった。だから故郷はジャマイカさ。
 
●音楽に関わろうと思った理由は?
C:良心と正義。音楽をするために、宇宙の力によって今ここに存在しているんだ。生まれつき運命にそう定められていたのさ。
 
●これまでのアルバム、シングルの制作枚数は?
C:アルバムは今回の『The Living Fire』で2枚目。シングルは100枚位かな? もう自分でも把握しきれない。ノリでどんどん録音するからね。2曲ばかりを2年間かけて宣伝するアメリカとは大違いだよ。
 
●どの曲が好きですか? 又誇りに思っている曲となると?
C:答えられないな。それぞれ違うし、ひとつひとつの曲には自分の血が通っているからね。
 
●誰にインスピレーションを受けましたか?
C:全能者(神)からだよ。
 
●あなたは自身の事を“The Poor People's Defender”—「貧しい人々の擁護者 」と称していますが、詳しく説明してもらえますか?
C:僕はゲットーの中で育ち、何人もの友達が目の前で殺されるような犯罪戦争の中で育った。これを皆に伝えなきゃいけないんだ。僕は彼らに金銭の援助もしているが、それだけじゃない。この社会で傷つけられ、認知されていない人達に焦点をあてるメッセージを伝える事が重要なんだ。例えば家族5人が一部屋に住み、仕事をいくつか掛け持ちしてどんなに働いても空腹さえも満たせないような人達の苦しみを自分の歌を通して伝えたい。彼らの涙を受け入れ歌に希望を込めているんだ。
 
●Fifth Elementsレーベルとの関係は?
C:僕は彼らの最初のアーティストで、ダンスホールの本来あるべき本質を引き出したと思うよ。家族のように助け合って完成度を上げるという目標があったんだ。
 
●最新アルバム『Living Fire』の名前の由来は?
C:Living Fire……つまり僕のトレードマークさ。
 
●半分を占める8曲のプロデュースにShane Brownを起用した経緯は?
C:Morgan Haritageの紹介だよ。彼とは最初、飛行機の中で18時間もミーティングしたんだ。実はその時もらったリズム音源をなくしてしまい、結局3回も再送してもらったんだけど…。リズムを聞いてみて、彼と一緒にやってみようと決めた。「Judgement」や「Freedom Of Speech」 の共同作業でチームワークが固まった。彼はいいエンジニアでもあるんだよ。
 
●ポジティヴなエネルギーが 各楽曲から出ていますが、このアルバムの目指すところは?
C:正しいと信じる自分の血の流れから自然に歌が出てくるんだ。人生で得るべき事は、物質に固執する事以上の何かがあるという想いを持つ事。これを地球全体へ広めていくんだ。
 
●本作収録の「Gash Dem」は放送禁止になりました。その経緯は?
C:本当の事を聞きたいだろ? 巷では黒人の間での殺人、子供への性犯罪をとりあげたバカげた歌が犯罪者の組織によって絶賛されたりする酷い状況が存在しているんだ。この曲は、真の意味で子供達への性犯罪を壊滅しようと訴えているのに、これが禁止になったのはバカげてるよ。
 
●その後「Freedom Of Speech」を発表して…。
C:ヨーロッパ・ツアーをしている時に「Gash Dem」が放送禁止になったと聞いたんだ。僕は戦士だ! ただ黙っているわけにはいかないよな。
 
●ジャマイカの最近の抗争、近況はどう思いますか?
C:悲しいね。なんとかしなきゃ。ブラック・ピープルは一緒にならなければいけない。ユニティとワン・ラヴを祈っている。でも俺の周りはOKだよ。Chuck Fenda というアーティストは、まるで水の流れのように動いている。川が海へ流れていくように、今回のアルバムもうまく行ったし、既に次のレベルに動いてるんだ。今のヴァイブスはいい感じだよ。
 
●ところで日本のアーティストのMoominのアルバム『Adapt』に収録されたThe Heptonesのカヴァ−「Why Did You Leave」に参加されましたよね。
C:Red Rose経由で誘われたんだ。トラックも良かったし、彼のヴォイス・サウンドもとてもいいからベストをつくしたよ。結果には満足しているし、Moominとは機会があればまた一緒にやりたいね。そう言えばMoominの声みたいなシンガーってジャマイカにはいないよね。
 
●日本へ行く予定は?
C:頼まれればいつだって行けるよ。日本の人達は丁寧でいい。今、日本のアーティストの頑張りでダンスホール・シーンが良くなっているみたいだしね。そんなカルチャーの現状を見てみたいしね。
 
『The Living Fire』
Chuck Fenda

[Greensleeves / GRELCD298]
最新アルバムとなるセカンド。放送禁止となった大ヒット曲「Gash Dem」も収録。

 

 

『Better Days』
Chuck Fenda

[Victor / 5th Element / VICP63298]
「I Swear」「Oh My Lord」を収録した5th Elementからのファースト・アルバム。


『Adapt』
Moomin

[Universal / UPCI-1046]
Chuck FendaをFeat.した「Why Did You Leave」を収録したカヴァー・アルバム。

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