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KON "MPC" KEN
拳POWA PRODUCTION
 
Interview by Naohiro Moro / Photo by Hiroto Sakaguchi
 

 
丁度、1年前位からその活動開始を耳にしていたHome GrownのKON“MPC”KENのレーベル/プロダクション、拳POWA Production名義の第一弾コンピレーション『拳POWA』が、いよいよリリースされる。現在に至るまでのムーヴメント全体に関わってきた人物による新たなレーベルの発足だけに、現行シーンにおける精鋭が集結した充実の内容となっている。そのプロデューサーであり、レーベル主宰者であるKON“MPC”KENに話を聞いた。
 
●実は1年ぐらい前から、レーベル第一弾のコンピを作ろうっていうプロジェクトは立ち上がってんですよね?
KON“MPC”KEN(以下K):そうだね。でも、(フェスティバル・)シーズンが来てしまったので、すぐに中断みたいな(笑)。でも、その間にブッキングしたっていうか、2007シーズンのバックステージで、その時の閃きで「やってくれないかな」みたいな感じで、皆にオファーしていったのが、その時期かな。それでOKの人にはオケを渡して…。
 
●で、レコーディングが始まったのが、去年のオフというか、11月辺りから?
K:そうだね。実際に録り出したのは、その頃だね。でも、いつでもやれる状態にあったから、その間、渡しておいたオケをエディットしたり、ゆっくり進んでいった感じだね。
 
●じゃあ、去年のひと夏は準備期間として必要な時間だった訳ですね。
K:そうだったかも知れない。
 
●「拳」って、そもそも発端は『拳プロジェクト』っていうテープ作品ですよね。あれって何年頃でしたっけ?
K:99年か2000年、その頃だよね。あれはオレとi-WATCHでオケを作って、曲を録って、オレがトラック・ダウンして、その曲と、普通のレコードをSleepyが併せて、90分のテープにした、ってヤツだね。
 
●そこが出発点ですよね。それまでライヴ中心の活動をしてきて、テープとは言え、作品として世の中に最初に送り出した、っていう。
K:そうだね。最初、i-WATCHが「やろうよ」って言ってくれて。なんかその時、i-WATCHがエンジンを点火してくれた感じで。その当時のオレの機材、MPCと、ローランドの音源1個と、安いコンプ1個と、VSの16チャンネルだけのセットで始まったんだよね。でもその曲をi-WATCHがジャマイカでダブ・プレートに切ってきてくれたんだけど、全然録音とミックスに納得がいかなくて。やっぱり、ジャマイカのレゲエの音とはかけ離れていて。結局、いつもそれの繰り返しなんだけど、もっといい音、もっといい音って、どんどん求めていく様になっていって…。て、感じだよね。
 
●で、今回のコンピ第一弾な訳ですけど、割とプロデューサー主導で「あーしてくれ、こーしてくれ」みたいな部分が多かったんですか? 何となくレーベルとしてのコンセプトみたいなものを感じたんですけど。
K:そう、あるよね、統一感。でも、ある程度(意見を)言った曲もあるんだけど、そんなに強くお願いとかはしてないんだよね。
 
●え、そうなんですか? 何か全体的なコンシャスな感じというか、僕的には統一された感があったんですけどね。じゃあ、BOXER KID & NANJAMANみたいな、新しいコンビネーションは、プロデューサーのアイディアで?
K:あれもね、実はBOXERがやりたいって言って。それでNANJAMANに言ったら「ええで」って感じで(笑)。MOOMINのところにAKANEに入ってもらったのは、オレのアイディア。ちょっとしたブリッジの部分なんだけど、本人と違う声を入れた方がいいな、と思って。
 
●じゃあ、自然にアルバムがこういう正義感の強い感じに向かっていったということは、アーティストの皆が「訳の分からないレーベルが立ち上がったのとは違うぞ」って思ったからなのかもね。
K:そうかな。だとしたら、うれしいんだけど。
 
●メンツも、シーンの濃いところのトップ・アーティストばかりだし。
K:それは意識してた訳じゃなくて、皆、オレの好きな、尊敬する人たちに頼んだ結果なんだけど。でも、リリース・パーティをやりたいな、なんて考えてるとフェスになっちゃうんだよね(笑)。「それってフェスじゃん」みたいな(笑)。
 
●まさしく(笑)。基本的にはKON“MPC”KEN自身のミックスだけど、何曲かはジャマイカでミックスしてきたんですよね。
K:そう、4〜5年前にホーム・グロウン全員で、ミックスのためにジャマイカ行ったんだけど、それ以来、そういうスタジオ作業のためにオレは行って無かったから。見ておきたかったんだよね、自分でミックスする前に。やっぱり、全然違うって言うか、勉強になったね。
 
●じゃあ、その感覚の残ってるうちに、残りの曲を自分自身でミックスして。
K:そう。だけど、こう、やってても、中々、答えが見つからない時も多くて。その代わり、答えが出た時は「キター!」って感じ(笑)。でも、次の日に聞いてみたらダメだったりして(笑)。
 
●ひとまず最初の名刺代わりがもうすぐ完成する訳ですが、今後の抱負はどうですか?
K:ホーム・グロウンでの活動もあるから、そっちもやりながらっていうのもあるけど、また、第二弾は作りたいと思っている。時間がかかるかも知れないけどね。やっぱり、オレは黒人音楽の、特にレゲエの、レーベルとかプロダクション単位で信頼出来るっていうか、レーベル買い出来る信用みたいな感覚に、すごい憧れがあって。あのミュージシャンとエンジニアなら間違いなくいい、みたいな。あと、レゲエ中心にはなるとは思うけど、多くの人にこのスタジオを使ってもらえるスタジオにしたいな。「KON KENがいるじゃないか」って思われる様なレーベルであり、スタジオにしたいね。
 

"拳POWA"
Kon "MPC" Ken & V.A.
[Overheat / XQEY-1001]
 
Text by Takashi Futatsugi
 
 前ページのインタビューにある通り、自然な流れで生まれた統一感に満ちた『拳POWA』。それは何よりも1曲1曲に込められた“レゲエ心”と、そこに刻まれた“拳印”があってのもの。二木崇がこの充実作がなぜ生まれたのかじっくりと解説してくれた。
 

 
 Kon Kenといえば……その名に“MPC”というミドルネーム(?)が付くだけに、Home GrownのMPC(AKAI製のサンプリング・リズムマシーン)奏者として、数々のレコーディング・セッションやステージで、その“タイミング命”の重要な役割を“センスが問われる音選び”と“確かなアドリブ技術”でもって担ってきた人物、としてご存知のことだろう。同バンドでもリーダーのTancoとともに、リディム・トラック制作における根幹を成す存在である彼は、単独名義でもRyo the Skywalker、Moomin、 Pushim、H-Man、 Rankin Taxi、Nanjaman、 Papa B、Papa U-Gee、Jr. Dee、Munehiro、Lisa等々、多数のアーティストの作品に関わってきた。そうした動きは前ページの茂呂氏による充実の取材記事にもあった通り、Home Grownがまだバック・バンドとしての活動を主体としていた頃にi-Watchと作ったテープ・アルバム『拳プロジェクト』の頃からあった訳で。その頃、といえばRankin Taxiプロデュースの『Bad Bad '98』に収録された「Man Ina De Bashment」に代表されるように“歌い手(DeeJay)”としても知られていたのだが、それだけに“歌心をくすぐり、呼び覚ます”ような核心を突くトラックを連発することが出来るのだろう。
 
 自身のスタジオ=拳POWA Studioで制作された、この“拳POWA”レーベル第1弾となるコンピレーション『拳POWA』から漂う“ただならない熱気”も、そんなKon Kenだからこそ可能になった有機的プロジェクトの意義を伝えるモノだ(右写真をご覧頂ければお分かりの通り、演者のラインナップもありえないくらい豪華!)。用意されたリディムは "Too Much Lovin' "、"Border-less"、"Ignition"、"Parasite" のヒューマン・タッチのミディアムからオールドスクールなコンピューターライズドもの、までタイプのまったく異なる4つだが、“歌い手に合わせて”大胆なアレンジが施されているのでひとつひとつの楽曲としての完成度がすこぶる高い。しかもそれは、ありがちな合成着色料を使ったものではないので、ストレートに“レゲエの心”を感じることが出来る(ラフなほうがいいトコロはラフなまま←これ重要!)。硬派な内容のリリックが多いのも“だからこそ”なのだろう。 

トラック制作から、アーティストのセレクト、プロデュース、レコーディング、ミックスダウンまで、そのすべてに“拳の刻印”がしっかり押されているのは言うまでもないが、「一番好きな音(ジャマイカの)に近づけるため」にかの地へ飛び、大物エンジニア=スティーブン・スタンレー(本誌296号&297号の貴重なインタビュー記事をプレイバック!)や、旬の男=シェーン・ブラウン(父親はトレジャー・アイルやタフ・ゴングなどでならした名エンジニア、エロール・ブラウン)のアディショナル・ミキシングを経て、一切の妥協なく仕上げられたまさに渾身の1作。ライヴMPCマスターらしく機を見るに敏なKon Kenだけに、このタイミングでこの内容というのも納得出来る。シーンのド真ん中に打ち込む、空手で言えば正拳突きのような強烈な一撃×15発、である。なんちゃってファンは聴かないように……って、本誌読者にはそんな奴いないか……。

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