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SHING02
歪曲
 
Interview by Hiroshi Egaitsu / Photo by Ayako Yamamoto
 

待ち合わせた場所で、SHINGO2を待つ。彼は『歪曲』という6年ぶりの日本語によるアルバムを持ってここに来ている。彼の持続する志がこのアルバムに描かれている。これまでと異なった評価を得るだろうと僕が思っていると、ハットを被った彼がやってきた。
 
荏開津広(以下E): もう(iPodが)回ってますね…日本での暮らしとベイ・エリアでの普段の生活は違うでしょう?
Shing02(以下S): そうですね、違いますね。まぁ、僕はもうベイ・エリアでの生活は長いので、18年とか(咳をする)、やっぱり、人種の雑多なところとか、心地よいですけど。
E: そうすると、東京、もしくは日本に対する感情は時々来る場所という感じですか?
S: そうですね、まぁ。でも、だんだん、自分が音楽をやっている仲間も増えているのもそうだし、今、姉も戻って来ているし、実家もこちらなので、向こうに住んでいるんですけど…。
E: 違和感はない?
S: 違和感はないですね。でも、東京の場合はやっぱり本当に磁場が強い、という感じがするので、関西に行くだけでも、なんかホっとする感じはありますね。
E: はい、はいはい。
S: ようやく出れた、みたいな。
E: なんでしょう? その磁場っていうのは? 両方の意味で?
S: やっぱり、両方だと思うんですが、街を惑星と捉えたら、引力があるじゃないですか? そこの引力に引き込まれて、みんなぐるぐる回ったりしているんですけど、その強い引力を撥ねるためにその引力より上回る力を持っていないと…そういう感じで。自分のエネルギーを持っていないと、やっぱり衛星みたいに回るだけで、精一杯、というイメージがありますけど。ニューヨークとかにも同じことが言えますけど、そこにいるとそこを離れなくても、いいんじゃないか?っていう、ある種の錯覚だと思うんですけど、そこに色々な人が集まってきているから、エネルギーがあって、活気といますが、僕は最近、本当にそういう街といいますか、国、雰囲気とか、音楽でいえばヴァイブとか、何なのか?ということを、今でも(筆者註:多分、このように話している瞬間にも)考えているんですね。ただせわしい、と、のんびり、というだけでも、なんでそこまで人に影響するんだろう?

*     *     *

E: 具体的な生活と作品はつながっていますか? それとも作品と生活は別ですか?
S: そんなことないですよ。特にアメリカ、カリフォルニアでは、色々な人、色々なバックグラウンド持った人が集まってきている。それで、すごくカルチャーを重視している価値観を持っている人が多いので、もちろん、ベイ・エリアで生まれ育った人もそうだし、外から来た人もそうだし、すごく自分のカルチャーを大事にするし、人のカルチャーにも敬意を払う。ニューヨークとは正反対。
E: あ、ニューヨークとは正反対?
S: ニューヨークとかは、もう我を持って、興味ないと思う人が多いと思うんですよ、そう感じますね。カリフォルニアには、とかくオープン・マインドなんで。そういった生活の中で、いつ、どこで、誰に会うか分からないっていう、楽しさがあるんですよ。本当に年齢、人種に関係なく、それに打ち解けやすいので、そういう出会いの中から、生まれたセッションっていうのが、すごく多いと思います。それは音に反映されてますし、そういうところで学んだ繋がり方、っていうのは、日本に来ても生かされている、と思います。自分と合う人を探る勘というか、すごく大事だと思います。
E: 大事ですね。
S: ただ自分の目的を達成するためには、この人のスキルを借りればいい、とかそういうんじゃなくて、考え方とかが、違っても、志みたいなものが一緒だと、本当になんかプラス・アルファみたいなことが出来ると思うんですね。お互いが学ぶ。

*     *     *

E: 意識して取り入れた日本文化の良い点、というようなものはこのアルバムにありますか? それとも、アメリカで生まれたヒップホップにせよ、日本の文化にせよ、いいものはいい、という態度で取り入れたのか?
S: どうですかね…まぁ、こんな考えているぐらいですから、僕は、日本というスケールでは意識していないと思うんです。むしろ、自分の、これまでの、吸収してきたもの、自分の中に蓄積されてきたものを出そう、昔から漠然とあったもの、それが日本の映画だったり、日本の文学だったり、映画音楽であったり、そういった、色々な美的感覚みたいなものを音楽に還元する、ということだと思うんですね。あの、今回は人をサンプルするというのがメインだったので、というか、すべてだったので(今回のアルバムでは大勢の人とコラボレーションしている)そこで、やっている楽器が邦楽器だろうが、洋楽器だろうが、それはスタート地点で、そこからいかに煮詰めていけるのか、いかに自分のアイデアを形にするだけではなく、その人(コラボレーションした人)にも驚いてもらえるような、新しい芽を引き出せればいいな、とは思っていたので。僕が満足すれば…僕だけが満足すればいいものとはまったく思っていなかったので。やるからには、本当にその人にも面白いものが出来た、と思ってほしい。そこの、音楽的なチャレンジがすべて。歌詞であったり、コンセプトであったりすれば、そこに限っていえば、日本の価値観を取り入れたりするというところもあるとは思うんですが、それはこのアルバムにあたって改めて考え直したものではなく、自分の中にずっとあったものなんです。
E: 家に書きためたメモ、とか家に散らばっているんですか?
S: ああ、ありますね。
E: それを繋ぎ合わせて歌詞を作ったりするんですか?
S: それは今回に限ってないですけど、ただ1つ言えるのは、あの、アイデアの中で、じゃあ、これを曲にしましょう、っていうのは本当に自分が選ぶわけですね。日常会話ではシャレにもならないけど、わざわざ曲にすると面白いかも知れない、というのはありますね。そういうランキングはね。

 

"歪曲"
Shing02
[Mary Joy / IDCM-1045]I-1085]

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