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305    ARTISTS    JR. DEE

JR.DEE
Synergy Effect With Two Mikes
  
Text by Naohiro Moro / Photo by Koji Ikuta
 

 2本(もしくはそれ以上)のマイクがぶつかりあった時に発せられる火花、そしてその次にやってくる躍動感。ダンスホール・レゲエの魅力のひとつでもあるコンビネーション・チューンをこれでもかと詰め込んだJr.Deeによる新作『Partner』がリリースされた。その充実した内容をじっくりと解説していこう。
 
 コンビネーション・チューンは、レゲエ・ミュージックの醍醐味のひとつだ。SingerとDee Jay。Dee JayとDee Jayでもいい。リリックが交差する最後の2小節にヴァイブスが込み上げて来て、マイクがパスされる正にその瞬間に最高潮に達して弾けるスリリングな感覚。そこにコンビネーションの美学があると思う。筆者世代でダンスホール・レゲエに嵌った人なら、Ninjaman & Tinga Stewartの「Cover Me」。Sanchez & Flourgonの「Mi Love Mi Girl Bad」辺りを初めて聴いた時の衝撃は相当なもんだったハズだ。歌を聴いた途端に、来るべきDee Jayパートへの期待が高まり、お約束的に繰り返す大マッシュ・アップ。あるいはDee Jay x Dee Jayの場合、その組み合わせがもたらすスペシャル感やゴージャス感。Dee Jayユニットの場合の卓越したコンビ芸の妙。それらはいつもレゲエ好きを楽しませてくれるエレメンツである。
 
 そんな醍醐味がたっぷり詰まったアルバムを、正に初期ダンスホール・ヴァイブスの伝道師Jr. Deeが届けてくれた。たっぷり詰まったどころか、イントロ、アウトロを除く14曲の全てがコンビネーション・チューンというJr. Dee & Friend 名義のアルバム「Partner」がそれだ。
 
 参加アーティストは、Papa B、Moomin、Mr. Jay、Papa U-Gee、Fire Ball、Ken-U、Yoyo-C、H-Man、Nanjaman、Maki(Syndicate Girls)といった豪華かつ、安心して聴いていられるジュニアの仲間たちに加え、横浜ウェッサイ・シーンよりマイク巧者Hyena、ジュニアの方から参加に声をかけたという新進気鋭の女性シンガーMetis、解散してしまった茅ヶ崎の伝説のメロコア・バンドNo End Whyのギター/ヴォーカルだった610 Chang、ダブ・バンド、振動弐百とのコラボの頃からの仲間の女性シンガーかりん、といったメンバー。これらのアーティストたちとJr. Deeが繰り広げる“相手を活かしてこそ、自分も活きる”という活人Dee Jayの極意。とくと耳にして欲しい。
 
 聴きどころはは多いのは当然だが、例えば、610 Changとのサーフィン賛歌「やっぱ波がイイじゃん」の、夏の夕暮れを思わせるアコースティックなオケとサーフィン用語のリリックを乗せたフロウが、ガッツリ、レゲエである感じ、とか。Home GrownのKon "MPC" Ken産のオケがいい感じのFire Ballとの「Shine」で聴ける掛け合いの妙、とか。Yoyo-Cとの「Reggae Music School」での躍動感と凄み、とか。新たに録り直したSyndicate GirlsのMakiがひとりで歌う名曲「Brand New Day」に、ジュニアが絡んで来た時に、何故か込み上げてくる切ない感じ、とか……。様々な経験を積み重ね、慎重に作品をリリースしてきたJr. Dee。前作「Sound Wave」から採用し、今作にも使用されているPopでHappyなイラストが表す様に「人をHappyにするレゲエを作る」というシンプルかつ、彼の人柄そのもののサウンドがアルバムの中で展開されているのだ。あっと言う間に聞き終わり、もう一度、頭から再生してしまった。
 
 ミュージシャンは、Mighty Crownのトラック制作チーム、TC Movement、Home Grown、Kon“MPC”Ken、ジャングル・ルーツ森俊也、などと言った面々。中でも全16トラック中、イントロ、アウトロを含む9トラックを手掛けたトラック・メイカーUGの手腕は特筆すべきだろう。高いクォリティと音楽性でサウンドに安定性をもたらしている。名曲「伊豆半島」や、アルバム「Point Break」の頃からジュニアの楽曲を支えるUGとは誰なのか、ジュニアに尋ねてみたところ、本作のディレクターとしてもクレジットされている(株)No Brandの吉田ユージ氏だという。「彼の音をジャマイカでミックスするといいんだよ」とジュニアは言っていた。
 
 その発言通り、13曲が贅沢なジャマイカ・ミックス。Shane Brownが4曲。Steven Stanleyが1曲。Bulbyが4曲。Bobby Digitalが4曲、といった布陣。その全曲のミックス・ダウンにジュニアは立ち会ってきたという。今年は活動開始20周年を来年に控えたカウント・ダウン・イヤーだとオビに書いてあったが、既にかなりのスケール・アップを果たした内容だ。
 
※      ※      ※
 
 以前は、そんなに具体的なサーフィンの歌は書かなかったジュニア。「だってサーファーにしか分からないでしょう」とよく前は言っていた。
  
 でも自身のレーベル「Point Break」設立以降は、そっちよりの曲も多くなってきている。本作収録の「やっぱ波がイイじゃん」などは、かなりハーコーなサーファー・チューンだ。だけど、サーフィンをやらない僕が聴いてもいい曲だと思う。曲そのものもそうだが、サーフィンを歌うジュニアがいいのだと思う。肩の力を抜いた自然なスタンスのヴァイブスは伝わるのだ。海とレゲエとサーフィンを愛するレゲエDee Jay、Jr. Dee。僕はとてもいいと思う。そう言えば思うんだけど、ジュニアは最近、イルカに近づいてるんじゃないか。でもそれもイルカに似てる人はあんまりいないから、僕はいいと思う。


 

"Partner"
Jr.Dee & Friends
[Fourmula / Point Break / QWCF-10025]

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