●まずは、ありきたりながら、音楽に携わり出した切っ掛けから。
(MINMI以下M):「まあ、音楽自体は子供の頃から普通に好きで、お稽古みたいな感じで小学校時代の6年間くらいピアノを習ったりしてたんですけど、クラブとか夜遊びをするようになって、いろんなジャンルのイベントに行く中で、初めはその中で音楽をしたい、とかは無かったんですけど、そんな時にレゲエのラバダブを見て、なんか今までに無い、普通の音楽のライヴとかと違う、自分もそういうのがしてみたい!(と思って)飛び込んだのが最初ですね」
いきなり「ラバダブ」なんて本誌読者には普通の言葉ながら、メジャーな女性シンガーのインタビューではまず聞かれない単語が飛び出してくる(後で聞いた話だと、普通の女性誌や一般誌、更に音楽誌でも、この「ラバダブ」等のレゲエ用語をいちいち説明しなきゃならなかったそうで…)。更には、事前にもらった紙資料には大阪の老舗サウンド、ターミネーターなんて濃いクルーの名前まで登場。
M:「私、初めにダンスホール・レゲエ聴き出した切っ掛けが、ロック・デザイヤーのダンスとかクラッシュとかからなんですよ。そういうコアなものに接する中で、それまでも好きだったブラック・ミュージックっていうものが自分の中で繋がったって感じですね」
●MINMIの歌詞の魅力のひとつに、シンガーながら結構堅く韻を踏んでいて、まるでDJのリリックのような世界を作り上げているところがあるんだけれども、もともとDJ指向もあったんですか?
M:「もともとレゲエで聴くのはDJ物が好きで。男だったら絶対にDJをやってて、ムーミンみたいに歌ってはいないカナ? ダミ声が出るなら、絶対DJ」
●アルバムの話になるんですが、全曲のプロデュースに関わってますけど、それは自分の希望でこういう形になったんですか?
M:「特に話し合ってそうした訳じゃないんですけど、いままでの作品作り全部に参加してきたから今回も、って形で、そんなに自分ではプロデュースをしたくてしたっていうんじゃなくて、ジャッジをする時に自分のやりたいように出来るから、ですかね」
なるほど。確かにアルバムにはレゲエ界のみならずヒップホップ側からも一癖も二癖もあるメンバーが名を連ねているが、通して聴くとはっきりと彼女の色に仕上がっているのだ。これでファースト・アルバムなんだからその完成度たるや、である。
M:「そう、自分のやりたい事が出来たし、プラス・アルファで関わってくれてるジュニアなりマイティ・ジャム・ロックなりに意見を貰って、自分だけでは出来なかった部分なんかも、乗せられていい感じになったと思います。彼等から“こういう感じの曲を”というのと、私から“こういう感じで”ってのを出し合って、やっぱり微妙に立場が違ったら出来るものも違ってくるから楽しいですね。普段の彼等の作品の色とはまた違うものが出来たかと思いますね」
とにかく、取材してみて感じたのは、“やりたいこと”や“伝えたいこと”の揺らぎが無いってこと。リリックの言葉選び一つにしても、現場色を残しつつも、専門用語は出来るだけ外して伝わり易くしたり(それでも十分に現場っぽいのだけど)と、ジャパニーズ・レゲエと所謂J-ポップの垣根を、見事にとっぱらっているのだ。「The Perfect Vision」の突然の大ヒットにしても偶然でもなんでもなく、見事に狙い、そして成し得たものなのだということが十分理解することが出来た。
最後に、今年は待望のソロ・ライヴ・ツアー(詳細は別項参照)が決定してるんだけど、その抱負を本人の言葉でこの原稿を締めよう。
M:「体力つけなくちゃ。一人で長時間ってのは初めてなんで、最後までヴァイブスが切れないように今、体力つけてます」
"Miracle"[Victor / VICL-61097]
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