Takeshi "Tico" Toki
Ikuma Sasaki
Seiji Big Bird
Koji Oishi
Kenta Tajika
Genichi Tamura
Takahiro Haruno
Naoyuki Uchida
Hakase



 リトル・テンポの移籍第一弾となるアルバム『Musical Brain Food』が素晴らしい。早速、リーダーの土生“Tico”剛、ドラムの大石幸司、サウンド・パトロールの内田直之に来て貰いインタビュー。彼らの頭の中は、いったい…?



今までのリトル・テンポのイメージを覆す、職人ならではの偏屈ぶりがいかんなく発揮された作品だと思います。これ、最高傑作なんじゃないですか?
Tico:当然です。

濃度アップ。
内田:必要以上に(笑)。

録音期間はどの位だったのですか?
Tico:去年の4月から12月まで。全部で3回ぐらいに分けて録ってたんだけど、いざ集まった時に何か温度が上がらなかったんだよね。一発目はいつも通りやって平均値までは行ってたんだけど、それ以上のものになんないから、「根本的なところからやり直さないとこれ、ヤベえよ」って話になってね。
内田:そう。だから最終的に出来たものって、自分達をかなり追い込んで、その中から出てきたものって感じかな。ボツ曲もいっぱいありますよ。

意外ですね。今回の作品は、今まで以上にバンド、つまりメインの3人だけじゃなくて、9人の男達の結束力や一体感をもの凄く感じたから。

Tico:何度か録音を重ねる内に、やっぱり初期設定としてレゲエをしっかりやろうってね。
内田:そうそう、最初テンパった時にレゲエじゃない曲もあったのね。「リトテン世界旅行」みたいな感じだったから。でも、やっぱり自分達の一番得意なグルーヴでやろうって。そう思い直して、またレゲエに近づけていったって言うか…。
Tico:シンプルにレゲエのフォーマットを追求して行って、そこからでしたね、本当の録音は。
内田:とにかく聴く人の想像力を越えたところ…先が読めないものにしたかったですね。

今回の作品は、世界を拡げて何でも取り込むアナーキーさと、「俺達はレゲエマンだ」という誇りが同居している感じがしたんだけど。
Tico:みんな他所でもソロ・ワークとか色々やってるでしょ。それぞれのマイ・ブームがアルバムに反映されたらいいな、と思ったし、自然とそうなったって感じですね。あと制作期間が長かったから、その間に色々ブームとかめちゃくちゃあったんだよね。
内田:うん。たまに「聴き会」ってのをやって、みんな持ち寄ったレコードを全部聴くんですよ。
Tico:サン・ラからメタリカまで(笑)。メタリカは意外と低音が無いかなあ、とか(笑)。ま、そんな音像の話とかして…。

一聴すると確かに北アフリカや中近東やハワイなど世界旅行的なものは感じるけど、何度も繰り返し聴いてると、核となるリトテン像がどっしりと構えているって感じますよね。それぞれアプローチを変えつつも、フォーカスはきっちり合っているし。でも、この作品が今までと雰囲気が違って聴こえる一つの要因として、今までソプラノやアルト・サックスを使っていた春野高広がバリトン・サックスやクラリネットを多様した事も大きいと思うんだけど。
Tico:今回の前に藤田陽子っていう女性のプロデュースをやったんですよ(『あたいの涙』)。その時のセッションで、春野に実験的にそういう楽器をやってもらったんだよね。その時やって良かった実験は、今回のアルバムにつながっていると思う。だからさ、サックスじゃない楽器やらせて、チンポ感を出そうかなって(笑)。

チンポ感(笑)…それなら「Fruits Ina Mammoth」が特にそのチンポ感が出てるのかな? これ、そういう意味ではかなりインパクト大だよね。
Tico:あのチンポ感が、春野なんだよね(笑)。

「リトル・テンポの始まり始まり〜」って感じのオープニング・チューン「Morocco」からの続く、真の意味で本編のスタート・チューン「Gagarin Goes To Jamaica」では、大石君が初の作曲を担当してますね。
Tico:それもレコーディングが盛り上った要因なんだよね。
大石:ガガーリンって、「地球は青かった」で有名な最初に宇宙に飛んだロシア人の人で。この曲の場合、ガガーリンの宇宙船がボロボロなんですよ。
Tico:宇宙で色んな災難に遭うんだけど、最後に漂着した所がジャマイカでさあ(笑)。(佐々木)育真さんのあのジジイ臭いギターはさあ、キース(・リチャーズ)の影響があるらしいんだよな(笑)。

「African Lullaby」は唯一のカヴァーですね。新しいリトル・テンポを見せつけたシングル一発目でもあるこの曲は、何処から引っ張ってきた曲なの? Tico:アーサ・キットっていう凄いエキゾチックなシンガーがいるの。その人の1956年にリリースされた『ザット・バッド・アーサ』っていうアルバムに入っていた曲で、かなりヤバいんですよ。

タイトル曲は「今我凡悟」や「Kedaco Is Gone」みたいな壮大な曲を、より痛快にしたハチャメチャな構成で圧巻でした。聴き終わった後、思わずバンザイしちゃったし。これ、打ち込みじゃないよね?
Tico:あれは、何処まで人力で行けるか、っていうチャレンジでした。今回、録音やミックスでデジタル機材は一切使ってないからね。そういうところにこだわりがあって。

シモンズドラムなのかな? スライ&ロビーが80年代によく使ってた…あれに似た音が効果的だし。
大石:あれ、田鹿さんがパールのDR-Xっていう80年代のパーカッションを使っててね。
内田:そういうのも最初から土生さんのデモ・テープに入っててね。「なんじゃこれ? こんなの出来るのかよ」って思ったんだけど、土生さんの頭の中でこれが浮かんでいるんだから、これをどうにか仕上げなきゃいけないって。中々お題が難しいって(笑)。
Tico:デモの段階で「ほんとにこれ、出来るのかよ」ってくらい作り込んでね。だからリハーサルは過酷でした。
大石:そう、大変だったですよ。でも、一回身体に入っちゃえば、あとは出来るわって。
Tico:ライヴで育っていくと、この曲ってどんどんおかしな事になっちゃうんじゃないかなあ。

ライヴと言えば、去年はあまりライヴをやらなかったけど、今年はいっぱいやってくれるんですか?
Tico:ライヴいっぱいやって、酒いっぱい呑んで(笑)。そんでまた次の構想を練ろうかなって。今、かなりテンション上がってるし。
内田:会えばアイデアばっかり出てくるもんね。
Tico:俺達、ほぼナッティ・トークだからさあ(笑)。ナッティ・トークで出てきた想像力を如何に音にするかっていう、そういう勝負があって、それを「ウッチー、これ出来るかあ?」って。
内田:凄い難題ばっかりで(笑)。
Tico:それを今回の作品で実現してったからさあ。それがいい結果に繋がったかなって。
内田:二日掛けてミックスしても出来なくて、って時もあったよね。「もうダメだあ、もう何も出ません」って(笑)…そんな時もあったなあ。でも、今思えば楽しかったけど。
Tico:ウッチーの顔が真っ赤になって茹でダコ状態って時もあったな。気付くとマスターテープをちょん切ってたりしてたよな(笑)。
内田:(苦笑)…でも、最終的には自分の中から出てきたものだから、少し自信になりましたね。
Tico:まあ、取り敢えずこれ聴いて、水木しげるの感じになって頂ければ。ポークショになってくれればいいね。

え? 「ポークショ」って何?
Tico:水木しげるのスラング。(ドライ&ヘビーの)七尾君くらいマニアじゃないと分らないかも(笑)。水木先生にこれ聴いてもらって、裸踊りして欲しいね(笑)。





"Musical Brain Food"
[Speedstar / VICL-61099]