上:9Miles/下:Bagdad Cafe The Trench Town


   ロック・ステディ/ラヴァーズ・ロックからの影響を強く感じさせる、注目のバンドを紹介しよう。その二組の共通点は女性ヴォーカルをフロントに据えているというところだ。

 まずは、東京の9 Miles。Club SkaのDJでもあるKazushige Hanada(メロディカ/キーボード)を中心として97年に結成されたこのバンドは、当初こそメンバー構成も流動的ではあったが、現在はHanada、Yasuco(ヴォーカル/キーボード)、Atsuo "Kassy" Kashibuchi(ギター)、Kami(ベース)、Kenji Munakata(ドラムス)の5人で活動している。都内のクラブ・イヴェントなどでコンスタントなペースでライヴを展開し、バンド・サウンドの方向性を固めていった彼らが、初のミニ・アルバム『万感の想いを込めて』をリリースした。本作でも1曲目に収録されている、記念すべきファースト・シングル「Mind's A Journey」に、彼らの奏でる音の魅力が凝縮されていると言っても過言ではないだろう。耳を惹き付けるイントロのブレイクから一転して淡々とリズムを刻むドラムス、抑制を効かせながら太いグルーヴを生み出すウッドベース、シンプルなフレージングで色彩を紡いでいくギター、そこにメロディカの素朴な音色が絡みあって生まれる9 Milesの音楽は、レゲエという言葉を超えて、広い普遍性を感じさせる。その印象をより一層強くするのは、やはりYasucoの歌声である。温かみと憂いが表裏一体となった彼女の歌声こそが、9 Milesのカラーを決定付けている。

 もう一組は、大阪のクラブなどを中心にライヴ活動を展開している、Bagdad Cafe The Trench Town。レギュラーで参加しているというイヴェント「Love Sofa」の同名コンピレーションに収録されたロック・ステディ・チューン「And Love」でその名前を広く知らしめた、総勢11人からなるこのバンドは、ロック・ステディ〜ルーツ・ロックに根ざしたどっしりと腰の座ったサウンドを聴かせてくれる。そんな彼らが7曲入りのファースト・アルバム『Love Sunset』完成させた。なんといっても一番の特徴といえば、ヴォーカリスト、マイを中心とした女性3人によるコーラス・ワークだろう。その佇まいからアイ・スリーズに例えられることもしばしばだが、迫力のあるマイのハスキーな歌声を耳にすれば、レゲエからの影響とはまた別に、和田アキ子〜大西ユカリあたりに連綿と続く、関西ならではのリズム&ブルース/ソウル・ディーヴァの匂いも嗅ぎとれるようでもある。そこらへんがBagdad Cafe The Trench Townが奏でるジャマイカン・ミュージックに人なつっこさと親近感を与えているのは面白いところだ。

 9 MilesとBagdad Cafe The Trench Town。そのルーツにあるものは、きっと、どこかでつながっているのだろう。しかし、生み出される音楽は、まったく異なる仕上がりをもっている。そこに行き着くプロセスがしっかりとサウンドに反映されているあたりにも、この二組のバンドの実直さが表れている。 




"万感の想いを込めて"
9 Miles
[0152/ OIGNCD1003-02]




"Love Sunset"
Bagdad Cafe The Trench Town
[M.O.P/ MOPR-003]