"Mighty Sparrow Volume 1"
Mighty Sparrow1
[Ice]
"Boogu Yagga Gal"
V.A.
[Heritage]

"Down Beat Uprising
Volume 1"
V.A.
[Commodo]
"Klassic Kitcher Volume 1"
Lord Kitcher
[Ice]
"Hot Shot"
Soul Brothers
[Studio One]

"カリプソ・リズム
Cook's Cooking"
V.A.
[Victor]


"Big Bamboo"
The Hiltonaires
[Coxsone]



"Rock A Shacka Vol.10
No More Rocking & Rolling"
V.A.
[Island / Universal]
"Carib Soul"
Soul Brothers
[Coxsone]



"カリプソ天国"
V.A.(DVD)
[Commodo]



"Trojan Calypso Box Set"
V.A.
[Trojan]


"Stanley Beckford: Play Mento"
Stanley Beckford
[Barcley / Universal]


"Rock A Shacka Vol.10
No More Rocking & Rolling"
V.A.
[Island / Universal]
"Cedric Im Brooks & The Light Of Saba"
Cedric Im Brooks & The Light Of Saba
[Honest Jons]



 つい数年前までは大型輸入盤店でさえ「その他のカリブ音楽コーナー」に押し込められていたカリプソやメント。このカリブが生んだ陽気な伝統的ダンス・ミュージックがここ数年、スカやロック・ステディ・ファンを中心に再評価され始め、今年に入ってイギリス、そしてここ日本などでも様々なコンピレーション盤がリリースされた。その音楽的背景と魅力を紹介しつつ、比較的入手が容易な代表作やコンピレーション盤を紹介。


 スカ、ロック・ステディ等のジャマイカン・オールディーズに親しんだ上でカリプソやメントに関心を持ち始めている方々を対象としてその説明を行いたいと思う。

 カリプソはトリニダッド・トバゴにおけるクレオール文化で生まれた音楽でそのカーニバル(謝肉祭)で生まれ育ったものを指す。その歴史は古く20世紀初頭にはカリプソニアンと呼ばれて活躍していたアーティストが存在する。当然100年以上の歴史がありその間に様々な特徴を持つに至った。歌詞の発達、スティールパンの登場、アメリカなど他国の音楽の影響などが挙げられるが、特に演奏の面では時代毎に楽器も変化していくため、カリプソとはこういうものだと表現するのは困難である。適切ではないかもしれないが日本の歌謡曲に例えると分かりやすいかもしれない。やはり時代毎に変化するため、ある特定の時代の歌謡曲はこのような感じと説明することは出来るが、それ以外にはメロディーに独特のものがあるように感じる以外に一貫した説明は困難に感じる。これはカリプソにも当てはまると思う。さらにカリプソは戦前からアメリカのレコード産業による商品化が進んだ結果、アメリカ・イギリスを中心に世界中にその名が広がるに至る。これが更にカリプソとは何かを説明する際にそれを困難なものにする。つまり、他国である時代にカリプソから影響を受けた音楽が登場した場合、影響の元になった時代のカリプソ(トリニダッドとは限らず、他国を経由した場合その国でのカリプソの場合もある)の特徴の一部をその他国のカリプソが持っているからである。強引だが結論として、カリプソとは基本的には前述の定義であるが、様々な音楽の存在するカリブ海においても有数の、長期にわたり世界へ影響を与えた音楽と言えるため、レゲエやスカのようにリズムで判断できるものでなく、キューバ等他のカリブ海の音楽に明確に当てはまらない場合でカリビアンの雰囲気を感じる場合これは「カリプソっぽい」と言う表現を使っても問題ないと思う。

 次にジャマイカのメントであるがこれはカリプソに比べて説明しやすい。カリプソのところで日本の歌謡曲という説明をしたが、メントに関しては日本でいう民謡と強引だが説明できると思う。全ての時代である程度楽器や演奏する曲が決まっていることがその理由である。ただし、1957年にジャマイカでのレコード製作全工程が可能になってから独立にかけて、メントがサウンドシステムでのプレイを含めてポピュラーミュージックとしてジャマイカで楽しまれた。この時代のメントは特に優れているものが多いと思える。日本である時代にR&Bやキューバのソンの影響を受けた民謡が流行ったということを想像していただければと思う。さてメントの楽器面での特徴はやはりルンバボックスとバンジョーであろう。それらを中心に様々な楽器が用いられる。これは実際に聴いていただけるとすぐに分かるはずである。そのメントはやはり歴史が長いが、一般に50年代を第一期、60年代を第二期、それ以降現在までを含めてを第三期として分けることが多い。ただこの呼び方は様々なのでご注意の程。
 これらカリプソおよびメントが後のジャマイカの音楽に与えた影響は当然計り知れない。Justin Hines, Eric Morris, Wailers、実際にカリプソニアンだったLord BrynnerとLord Creator, Gaylads, Prince Buster, Jackie Opel等、スカの時代だけでも数知れないアーティストがカリプソやメントの影響を受けている。

 日本ではジャマイカのオールディーズが中心のクラブイベントも沢山開催されており、当然カリプソやメントがプレイされる機会も増えてきたように感じる。ただ50〜60年代のカリプソ(ジャマイカン・カリプソも含めて)と異なりメントに関しては使用している楽器もスカとは異なる場合が多いため、むしろメントソングをカバーしたスカのほうが好まれていると感じることもある。もちろんクラブイベントはその様式も様々で一概には言えなく、ど真ん中のメントで盛り上がっている場合も多々ある。

 現在までにカリプソやメントの再発やコンピは多数発表されており、以下に代表的なものを紹介する。
 メント第一期のものでは、唯一容易に入手可能な『Boogu Yagga Gal』が挙げられる。もう一つこの時代のものが含まれる『Laurel Aitken : The Pioneer Of Jamaican Music』も挙げておきたい。次にメント第二期のものとして今年発売になった『Downbeat Uprising Selection Vol.1』と『Hiltonaires:Big Bamboo』が入手し易いであろう。60年代にはメントというよりはジャマイカン・カリプソと呼ぶべき多くの録音が残されており、それらは以下で聴くことが出来る。『Trojan Calypso Box Set』、『Independence Jump Up Calypso』等とStudio 1からの再発でSoul Brothers, Gaylads, Lord Creator等が挙げられる。70年代以降の第三期としては一部メントが収録されている『The Light Of Saba』、Jolly Boysの数枚のCD、『Stanley Beckford : Play Mento』、『Rod Dennis Mento Band : Original Jamaican Music』が入手し易い。

 さて次にカリプソだが、スカ、ロック・ステディ・ファンに向けてと言うことで50〜60年代のもので入手し易いものを挙げることにする。先ずイギリスもので唯一入手し易い『London is the place for me』、トリニダッドもので日本独自企画の2枚『カリプソ・リズム〜Cook's Cooking』、『No More Rocking & Rolling』と前2枚同様Cook音源の『Calypso Awakening』。この他には、ICEから出ているMighty SparrowとLord Kitchenerの『16 Carnival Hits』およびそれぞれ個人名義で出ている数枚のCDをお勧めしたい。

 今後もメント、カリプソ共に様々な編集盤や再発盤が登場することが期待でき、これらの長い歴史に育まれた音楽が一過性のものではなく長く楽しまれていくことを期待する。