まず最初は、先頃シングル「Joy Of Life」をリリースしたばかりのMoominが矢継ぎ早に届けてくれた、ジャケも含めて夏気分満載の「夏キラキラ」。プロデュースのM.Kamishiroをはじめ、森俊也や西内徹（Reggae Disco Rockersなど）、I-Watch（Home Grown）といったお馴染みのメンバーが集結している。Pushim曰く「海や潮風を感じさせる」というMoominの歌声が、印象的なメロディーを伴いながらサラサラと“夏景色”を描いていく――これはかなりたまらん仕上がり。彼のようにキャリアのあるシンガーがこのクォリティーの作品を出し続けているという事実は、聴くものだけではなくシーンそのものにも安心感を与えているのではないでしょうか。一声流れてきただけで瞬時に景色を変えるその歌声も、もはや上質なワインのような（って呑んだことないですが）味わいだ。一方「Livin' With Green」は山嵐とKayzabro（DS455）という湘南〜横浜の仲間たちを迎えたもので（山嵐の最新作にも収録済み）、「ジャンルレスな〜」なんていう言葉すら必要ないほどのガッチリしたタッグを聴かせてくれる。

　さて、こちらはタイトルからして独特のセンスが凝縮されていてニヤリとさせられるPapa Bの「常夏王女夏女〜ココナツ王女ナツメグ〜」。Jungle Rootsを従えたストレートなサマー・チューン……とはならないあたりが流石で、中盤でラウンジ・ジャズに転調したりする芸の細かさが実にPapa Bらしい。ごく日常的な夏の風景にヒト匙加えて強烈な聴後感を残すなんて、彼にしかできない芸当でしょう。白眉はカップリングの「Cut Bay〜Surfin Bird」で、こちらはトラッシュメンが60年代に残したカルト・サーフ・パンク曲のカヴァー。原曲に忠実に仕上げながら、言葉遊びの楽しさも当然のように盛り込んでいて、レゲエ界随一の幅広い音楽的趣向を持った彼の本領発揮といったところだ。さらに『Neo Entertainer』収録の「風の国のランボー」もアコースティック・ヴァージョンで収録。いまさらながらPapa Bの歌の上手さに舌を巻く。

　いよいよひさしぶりのオリジナル・アルバムのリリースも見えてきたRyo the Skywalkerは、かの「Free」を思わせる「Seize The Day」をリリース。Home Grownと恐山Crewを伴ったこの曲のテーマは“生きることに対する喜びをいま改めて考えよう”というもので、サックスがむせび泣くイントロから確実に涙腺が刺激される。昨年の末にリリースされた「Gimme Ur Vibes」での不穏なジョグリン・チューンの乗りこなしも当然彼の魅力だけど、この表題曲のようなポジティヴ・チューンを待っていたファンも多いはず。一方Sly Dunbar製のアコースティックなトラックが染みる「To The Future」は、一言で言えばRyo流のラヴ・ソング。これまた涙腺が……（特に女子は注意）。それにしても、一段と声が太くなり、同時にメッセンジャーとしての風格もさらに堂々としたものになってきたRyo。これは新作にも思いっきり期待していいでしょう。

　一方、先頃リリースされた「Joyful Days」ではスケール感の大きいメロウ・チューンで勝負してきたFire Ballの「キットヒット〜踊るカルマン〜」は、4人のコンビネーションの楽しさを前面に押し出したカリビアン・ムードもたっぷりの仕上がりで、これは現場でこそ聴きたい1曲。遊び心をふんだんに盛り込んだリリックをしっかり覚えて、そのときに備えておこう。Sunset The Platinum Soundを迎えたカップリングの「Mission No.9〜キヲツケロ〜」は4つ打ち一歩手前の前のめりなトラックに乗って情報社会の“罠”について警告を鳴らす1曲で、4人のコンビネーションのアイデアをさらに練ってきた後がはっきりと窺える。複雑なのに聴き取りやすく、そしてダイレクトに聴き手に届いてくるリリックにも磨きがかかってきた。こちらのメッセージにもぜひ耳を傾けてほしい。

　いずれもニュー・アルバムのリリースを真際に控えているわけだから、あまり大袈裟なことは言いたくない。ただ、それぞれにキャリアを重ね、これまで新境地を開拓し続けてきた彼らが、ここにきてさらに前進していることはまったく驚くべきことだと思う。やっぱり大袈裟？　いやいや、これらの作品を聴けば僕の言っている意味をわかってもらえるはず。いやー、いい季節になってきましたね。