“永く付き合いたい歌”がまた増えた……。Pushimの待望のニュー・シングル「Anything For You」は早くもこの夏のビッグ・フェス、ビッグ・ダンスで歌われている“あの曲”である。彼女自身とHome GのTancoに、これまでの諸作やライヴでも息の合ったところを見せてくれたマルチ・キーボード・プレイヤー＝渡辺貴浩の３人がプロデュースしたラヴァーズロック・テイストの楽曲ながらも、その“歌いっぷり”はその域をはるかに越えている。それは彼女が真に“エモーショナルなシンガー”であり、“情熱的なソング・ライター”である証、とも受け止められよう。“大切な人へ想いを込めて歌う”というある種普遍的なテーマも、シンガー＝Pushimのメーターを振り切ったパフォーマンスがあってこそ光り輝くというもの。

それだけ“凄い歌”ながらも、どこか親しみ易い、言い替えるならばレゲエらしい“あたたかみ”のあるものに感じさせてくれるところがまた、ソングライター＝Pushimの器の大きさであり……既に一緒になって口ずさんでいるアナタにそんなことを説明しても仕方がないかも知れないが……。
つまりこの曲は（最近の例で言えば）「Forever」や「a song dedicated」がそうだったように、周りの誰かに聴かせたくなる“名曲”だということ。ディーン・フレイザーのよく歌うソプラノ・サックス、スティーヴン・スタンレーのコントラストを効かせた鮮やかなミックス、アニメーションを取り入れたストーリー展開も素晴らしいPV……どれひとつ取ってもこの「Anything For You」は素敵です……。因みにこのシングルにはカップリングで他に２曲の未発表新曲と１曲のリミックスが収録されており、そのどれもが決して素通り出来ない内容となっている点にも注意して頂きたい。

「Anything For You」同様、３人で制作された「Da Bulldog」は熱いコーラスやMCも印象的な現場チューンであり、もう１曲の「Reach To The Goal!」（これもプロデュースはPushim, Tanco & 渡辺）は人生の長い道程を共に歩む仲間たちに対して歌いかけた、リズム＆ブルース色豊かなファンキー・レゲエといった赴き。共にライヴでガンガン歌われることになる筈なので、今から聴き込んでおくことをお薦めしたい。そして最後に配置された「Anything For You」のリミックス版は、“何と！”と言うか“やはり！”と言うか、ソカだったりするのだ。Pushimが“ソカ好き”なのは以前から知る人ぞ知るハナシ。そして何とも絶妙なタイミングで実現したこのソカ・ミックスを担当したのは、Blazer「Crazy Wine」、Ginja「Roll Back On It」、Denise Belfon & Ghetto Flex「Wine & Bend Over」といった“VP”からの人気シリーズ『Soca Gold』にも入っているようなヒット・チューンを手掛けているRichard "Charsu" Ahong（チャイニーズだそう…）で、しっかりと今風なアーバン・ソカに仕上がっている。

　そんなヴォリューム感たっぷりのシングルとほぼ同時にリリースされるアルバム『Dazzlez〜Songs Of Songs〜』の方もかなり興味深い内容だ。“歌”にフォーカスを当てたメロウ・ソングス・コレクション・アルバムとなる同作は、先に触れた新曲「Anything For You」から始まる“Pushimのスタンダード的な名曲集”。1stアルバム『Say Greetings!』からは「Brand New Day」「Strong Woman」、2ndアルバム『Colors』からは「Heavenly」、「波が... (Green Tings Version)」、「Lyrical Feeling」、「悲しくてやりきれない」、3rdアルバム『Pieces』からは「Forever」、「I Wanna Know You」、「夢じゃないToday」、「らくだ〜歌の歌〜」、そして4thアルバム『Queendom』からは「Fresh!」、そしてシングル・オンリーのヴァージョンだった「Like A Sunshine, My Memory (EOL Mix)」（手掛けたルイ・ヴェガが自身で制作したコンピ・アルバムにも収録したほどの傑作）や、アナログで先行カットされ話題を呼んでいた「a song dedicated (In This Together Mix)」（ディーン・フレイザーによるジャマイカ・リミックス）がそれぞれピックアップされていることからも判る通り、これはただのヒット・コンピ盤などではない。僕らをその歌ヂカラでノックアウトしてくれた多彩なメロウ・ソングスの数々が、意味のある並びでまた新たな表情を見せてくれる……そんなタイプのアルバムなのだから。“かけがえのない人へ”の歌のプレゼントにいかが？