MIX CD
1. Peanut Butter Wolf / Yo! 45 Raps Vol.1 (Lexington)

7"セットで盛り上げるのもウマいDJ、PBWの何と“7"オンリー”で、しかも“ヒップホップ・クラシック・オンリー”という実にハードルの高いミックスCD。オリジナル・コンセプト(ドクター・ドレ&エド・エヴァー!)「Knowledge Me」、ジョースキー・ラヴ「Pee Wee's Dance」のミックスからスタートする2枚使い有、ロング・ミックス有の、キッチリと作られた1本。オールド・スクール入門用にも最適、でしょう(かなり上級者向きだが…)。

ALBUMS
2. Nas / Hip Hop Is Dead (Universal)

ジェイ・Zとの和解から、まさかの“デフ・ジャム”入りを果たし、通算8作目の新作をドロップしたNas。今作のテーマはタイトル通り「ヒップホップの死と再生」となっていて、相性の良い(?)「In-A-Gadda-Da-Vida」をウィル・アイ・アムが弾き直したタイトル曲を軸に、全体が絶妙に繋がったコンセプト・アルバムとなっている。ジェイ・Zやカニエの参加こそあれ、心配されていた(?)“デフ・ジャム”カラーは希薄で、ドレーも実にいい仕事をしている。「Where Are They Now」に詠み込まれたアーティスト名に反応してしまうオールド・ファンも納得出来る凄絶な“ラップ・アルバム”。
3. Ghostface Killah / More Fish (Universal)

何と!1年の間に2枚の新作を出してきたGFK。本誌“Best Album”にも選ばれた『Fishscale』の続編的な1枚だが、エリック・B&ラキム「Juice」のリメイク「The Ghost Is Back」の快調ぶりからもより突き抜けた何かを感じずにはいられない訳で…。そんなAKAプリティ・トニーを盛り立てているのは実息サン・ゴッド(17歳)も正式メンバーに加わったセオドア・ユニット。彼らがワサワサと約8割参加している為か、ウータン色も強まった?
4. Snoop Dogg / Tha Blue Carpet Treatment (Universal)

ドッグ・パウンドのリユニオン作では真の意味での“ウェスト復興”を呼びかけ、先行カット「Vato」ではB-リアルと共にブラックとブラウンの団結をうたっていたスヌープ。この実に2年振りとなるソロ最新作ではある意味“原点回帰”しつつ(フロウの事ではない)、今の彼(=ボス)でしかなし得ない豪華ゲスト(ジョージ・クリントン、ダミアン・マーリー、エイコン、ジェイミー・フォックス、ゲーム、アイス・キューブ、ドクター・ドレー他)の呼び込みや、ビート選びのセンスにも言い知れない説得力が…。とにかく良曲揃いの横綱アルバム。ウェッサイ聴かず嫌いこそ聴くべき?
5. Jim Jones / Hustler's P.O.M.E. (Victor)

リミックス編も豪華な「We Fly High」のビッグ・ヒットやジェイ・Zとのビーフde“時の人”状態の、デップセットの裏番長ことジム・ジョーンズの3rdアルバム。「ボォ〜リィ〜ン!(羽振りいいぜ!)」が口癖のこのキャラが命のラッパーが、故2パックをアイドル視していた事は1stの頃からバレバレだったが、元マーダー・インクのヒット・メイカー=チンク・サンタナと仲が良かったとは…。そのチンク・サンタナが6曲で腕を振るった本作が音楽的にもこれまでで一等内容度の濃い(リリックのそれは抜きにして)モノとなっているのは言うまでもない。
6. Clipse / Hell Hath No Fury (BMG)

「新作? もう全部終わったよ。出来? ヤバいとしか言いようがないよ」という言葉を直接聞いたのが2年前の来日時、という事は1stから約4年振り!?の2nd。その間に何があったかはこの際どうでもいい。新レーベル“リ・アップ・ギャング”を立ち上げ、アブ・リヴァもそこに引っ張ってきた彼らは心機一転、フレッシュなビートの上で持ち味のコンビネーションの利いたラップを聴かせてくれるのだから。トラックは全曲ネプチューンズ(クレジットされているのはファレルのみ)で、スリム・サグをfeat.した「Wamp Wamp」を始め彼らしい押し/引きの効いた曲ばかり。相変らずラップ上手いデス。
7. La Melodia / Vibing High (Handcuts)

アムステルダムから素敵な一枚が。自身名義のインスト作でも知られるI.N.T.とカリブの血も引くフィメイルMC=メロディのユニット、ラ・メロディアの1stアルバムがそれ。MCライトが目標とするラッパーで、ライヴァルというか近い所にいると感じる一人がヴォイスと公言するだけあって、メロディのラップはオールドスクールの何たるかを心得たカッチリしたもので、I.N.T.の捻り出すサンプリング・ベースのそこはかとなく浮遊感のあるクールなトラックとの相性もかなり良い。尊敬してやまない亡きジェイ・ディラに捧げたかの様なタイトル通りの1枚。
8. The Brobus / Murder Bullets (Warner)

『Game Plan』から待つ事2年…抜群のチームワークで知られる漆黒の弾丸野郎達が還ってきた。このとても1stとは思えない強度(正にブラバス級)を誇る本作には、夢と現実、喜びと苦悩等の普遍的なテーマが人間味のある言葉とユニークな表現で綴られていて予想以上に門外漢にも入り込み易い作りとなっている。「これぞヒップホップ!」というエッセンスがそれを際立たせた結果、“名作”が誕生した(と思う)。各々個性的なスタイルのB.D、Bazoo、Dweet、そしてプロデューサーのHassy The WantedにDJのFooch、彼らの動向に注意すべし。
9. Mr. Itagaki a.k.a. Ita-Cho / It's My Thing (Victor)

Nitro周りのプロデュース・ワークやネタ物ミックス・テープ等でその存在が知られる“フィクサー”Mr. Itagaki a.k.a. Ita-Choの自身初となるソロ・アルバム。タイトルにもある様に、楽曲のテーマも彼自身の考えや、それに共感したアーティスト達の返答を主としたもので、細部に渡って“Ita-Choワールド”が楽しめるハイ・クォリティ・アルバムとなっている。ゲストは、Nitro全員、Muro、D.L、K-Bomb、Gocci、Tad's A.C、Mars Manie、Mikris、565、Sing02、Tina、Butcher等々。プロデューサーとしての、あらゆる面での“奥深さ”が味わえる大作。
10. Seeda / 花と雨 (KSR)

Scarsでのアルバム・リリースも記憶に新しい、Tokyo Underlineムーヴメントの立役者Seedaの新作。前作『Green』では4曲トラックを担当していた“西の天才トラック・メイカー”Bach Logicが今回は全曲分のビートを用意し、Seedaも新たな引き出しを開け、鳴りの良いビートに応えている。揺るぎない視点から放たれる意味の深い詩と、時にメロディアスで時にストレートなフロウ(リズム解釈がバツグン)は聴く者の耳を惹き付けてやまない。亡き姉へのレクイエムとなるタイトル曲でこみ上げる何かは、確実に“次”へと繋がるモノだ。
11. Anarchy / Rob The World (R-Rated)

西の都の覇狼軍団=R・レイテッドからの初のフル・アルバムは、同レーベルのヘッド=Ryuzoが惚れ込んだ逸材Anarchyの1st。既に3枚のE.Pや数々の客演でその独特のささくれ立ったラップを披露してきた彼の現時点での最高の作品集である事は筆者が保証する。Bach Logicプロデュースの「K.H.B.K.」から、泣けるシングル曲「Growth」、M.O.S.A.D.の技有リメイク「Ghetto Fabulous」(トラックも"E" qual)、Anarchyもメンバーに名を連ねるRuff Neckの名曲「No Big Deal」、Ryuzoとのセッション「Change The Game」他、高濃度な楽曲ばかり。ハードコア=一本気で“痛み”の表現にも長けた彼のラップは他の音楽ファンにも刺さるハズだ。
12. Ultra Naniwatic MC's / The First (Daiki)

Libra West代表Shingo☆西成+元Word SwingazのMista O.K.I.+餓鬼レンジャーのYoshi +446(今回は1曲のみの参加)+DJ Fukuの“奇跡の合体”。既に現場でお馴染みのこのスーパー(濃口)ユニットの初アルバムは、ええダシたっぷりのオツ(カレー臭〜ぅ!)なモノ。相乗効果もかなりのモン。キーワードはズバリ“浪花”、そして“三十汁”(三十路男汁?)。おもろうて、やがてうんたらかんたら(哀愁もんもあるにはある)。要は体と頭に栄養タップリの補助食品(紛モン?)というとこですワ。DJ High Switch、GP、Evis Beats、DJ Fuku、DJ AKらバックアップ陣もグチョグチョッジョブ、で思わず嬉ション? ナニワともあれ必聴。